★帯の変色は直る?しみぬき出来る帯・出来ない帯 ―着物クリーニング―
帯にもいろんな種類があって、袋帯、名古屋帯、半幅帯等、様々です。季節やシーンやTPOにあわせて使い分けますね。
今回は、帯のしみや変色についてのお話なので、先程の帯の形状の種類は関係ありません。関係あるのは、帯の素材や構成上での種類ですね。よく「織りの帯」「染めの帯」「金銀の帯」という言われ方をしますが、こうした分け方でも帯にはたくさんの種類があるのです。
シミや汚れや変色やカビは、油溶剤や水や洗剤、それに薬品も使って洗ったり、漂白や脱色もしますから、「どんな素材なのか」「どんな構成なのか」がとても重要になってきます。出来る作業が限られてくる物がたくさんあるからです。では何を見極めているか、まずそこからお話しましょう。
―――帯の構成上の種類———
○織り
素材 ①絹、綿、麻、他、天然素材
②ポリエステルなどの化繊
③紙、毛糸
④金銀プラチナなどの金属系、螺鈿
⑤フィルム、箔
⑥①〜⑤の混合
織り方①綴れ織り
②羅や紗などのもじり織
③裂き織
④何層も重なる複雑な織り
○染め
①手描き ②草木染め ③絞り
④藍、墨 ⑤紅型などの顔料染め
⑥金彩、金箔、螺鈿
⑦①〜⑥の混合
⑧下地の生地の素材が何か
○その他
①刺繍
②芯の素材
③切り嵌め、アップリケ、パッチワ
ークなどの創作帯
④漆や皮革などの素材
⑤ボケットがついているなど形が複雑
などなど、帯はデザイン性も高く、思いつくままに羅列しただけでもいろんな素材と構成の種類が豊富にあります。他にも抜け落ちているのもあるでしょう。皆様のご家庭には着物や帯がそんなに無いからわからないと仰る方もおられるでしょうが、昔は「着物一枚に帯三本」と言われた時代もあって、帯でコーディネートを替えて着回しを楽しまれていたので、帯は無限と言っていいくらい種類があるんです。
―――しみぬき出来る帯・出来ない帯———
さて、帯も衣装の一部ですから、汚れたり、変色が出ることもあります。よくあるのは着物からの色移りですね。芯がカビて、芯からのカビ黄変もよくあります。
そんな場合、着物と同じように洗いやしみぬき、染色補正が可能な帯は、「染め帯」です。染め帯も、化繊、金糸の織り込み、草木染め、他など、着物と同じように、出来ない物もありますが、しみぬきが可能で綺麗になる帯もたくさんあります。
ですが、「織りの帯」の場合は逆に、薬品を使ったしみぬきは出来ません。特に西陣織に代表される絢爛豪華な金銀の織物は、薬品も、場合によっては水も使えない事もあります。ですからしみぬきは出来ません。素晴らしい色のニュアンスは、様々な素材の糸を織り込んで作り上げてあるので、その中のどれかが薬品や水によって損傷する事があります。シミに見えているのも実はそういう状態で、金糸銀糸の金銀が剥がれていたり、錆びて変色していたりする事がよくあります。生地の変色とは違って、物理的な変色なんですね。ですからどうしても直したい場合は、理論上では、その部分の糸を取り替えて織り直せばいいと思いがちですが、現実にはそれをするとその部分だけ変わってしまったり、段が出来たり線が入ったり、また、不可能な場合もあるため、それも出来ません。
紬などの先染めの一色の織り物や、糸の堅牢度が高い場合など、可能な物もありますが、先染めは基本的には補正が出来ないため、藥品は使えません。ですから、他の方法で目立たなく致します。金加工、パール加工、柄足し、仕立てによる繰り回し、作り帯に加工する…など、いろんな方法があります。
帯は千差万別、私の帯は大丈夫かしら?と心配な方は、見極めの出来る専門店に相談しましょう、もちろん弊社でも承ります。また、芯からカビが来ることもよくあるので、こまめに虫干しして乾燥を保ち、カビを防ぎましょう。着物よりたたみやすいので楽ちんです。シミや変色が出ても、あきらめてしまわないで、一度ご相談くださいね。
次回「西陣の栄華の象徴“千両ヶ辻”で見つけた金の糸とは」は、今回の続編です。より詳しく説明いたします。お楽しみに。