☆スレは目立たなくする事はできますが・・・ー着物雑学ー

スレ=擦れ、つまり、生地がこすれてしまったり、摩擦によって白くなったり、ひどい場合には生地が薄くなっている等のような現象を スレ といいます。生地がすり減っている状態ですから、目立たなくする事は出来ても、完全に元通りにする事は出来ません。

絹だけではなく、どの繊維でも折れる位置やシワのできる位置に多少のスレは起きると思いますが、今回は絹の繊維のスレについてご説明致します。

 

絹は、以前にも少しお話しましたが(「先染め(先練り)・後染め(後練り)とは[先染め・後染め_前編]をご覧ください)、繭からとれる生糸から、周りのセリシンというタンパク質の糊の役割の部分を取り除いたり除かなかったりして、中のフィブロインという繊維質を加工して作られています。

そしてそのフィブロインは、更に細いフィブリルという繊維が何百本も集まってできており、フィブリルは更に細いミクロフィブリルが集まってできています。

 

スレとは、この組織であるフィブリルやミクロフィブリルが切れてしまっているミクロの世界の現象なのです。だから直せないんですね。

 

スレのメカニズム

ただ単に表面の色が軽くすり減った、というような軽いスレもありますから、程度の問題ですが、何度も擦れてしまう位置のきついスレは、色補正を施してもどうしても同じ所が再び擦れたりするので、一時的に美しくするだけになってしまいます。それに、薄くなった生地の風合いを戻すことは不可能なんですよね。

残念ですけど…

 

では、せめて着物の擦れやすい部分とその対処法についてお話しますね。

一番は脇、そして帯枕が当たる位置です。脇とは身八つ付近で、特に前の方がよく擦れます。

その次に衿、帯の背中側の帯締めが通っている付近などでしょうか。つまり、汗をかく場所や、折れ・しわになりやすい場所に起きます。

何故ならスレは、摩擦と熱と水分の3点が揃った時、最も強く出るからです。暑くて汗をかいて擦れる所というわけですから、この3点が揃わなければ多少軽減されます。身体を動かさないわけには行きませんが、汗で湿るのを防ぐ事なら可能です。着る時に中に汗をとるタオルを入れたり、また、脇のしわの入り方も着付けのやり方によって違い、いろいろ工夫されてるようです。

 

ですから、撥水加工もスレ予防に効果的です。特に濃い色や黒地の着物はスレが起きると目立ちますから、汗や摩擦にご注意下さいね。

スレのお直しでは、色補正はもちろんさせて頂きますが、きついスレで生地が薄くなってると、色が入らなかったり定着しなかったりして、色補正が出来ない事もございます。また、帯の下付近などで、着用時目立たないのであれば、その位置・色・生地の状態によっては、色補正はしない方が良い場合もございます。

一つ一つ、症状に合ったご提案をさせて頂きますので、ご相談くださいね。

(「深色加工のスレ」 も、合わせてご覧下さい。)

 

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