☆ 日本全国どこへ行っても名産の染織品があるんです。―着物雑学―

日本人は洋服を着て生活する以前は着物(呉服)を着て生活していました。今でこそ洋服が当たり前ですが、50~60年前、昭和30年代や40年代はまだまだ着物人口が多かったのですよ。化学繊維がまだ今ほど発達してなくて着心地もあまり良くなかったのも一つの理由かも知れません。町でも普段着の和服姿を普通に見かけました。

 

ですから、古代からの歴史の中で日本では、それぞれの地方の自然の風土に合った、そしてニーズに合わせた、染めと織りが発達して行きました。

 

今さらですが大切な事なので何度でも言いましょう。

着物は、その大半が自然から作られています。

その土地に合わせた太陽や風、気温や雨、水、土、海川。木、草花、そしてそこに暮す人々の叡知や熱意や努力が結集して作られた物なのです。極論を言えば人々は自分の着る物を生地から自分で作って着ていたのです。

 

ですからその土地土地で様々な優れた名産品が生まれました。これも意外と知られてないんですよね。旅行のツアーガイドをされてる方でもご存じなかったりするんですけど、思い出して下さい。日本を旅行すれば各地のお土産屋さんに、必ずおまんじゅうがあるくらいの確率で各地の染織品が売られていることに気付いた方もおられるのではありませんか?

 

きもの検定公式本より

 

この地図を見て、“私の故郷には無いわ“とがっかりした方、そんなことはありません。これは、あり過ぎて書ききれないので、抜粋されているだけです。中には、染めや織りや関連の技が凄すぎて、重要無形文化財だとか、伝統工芸品だとか、国や経済産業省や都道府県から指定されている染織品や保持団体もありますからね。職人さんや作家の方には、人間国宝に指定されている方もおられます。

 

私達は着物のしみぬきの仕事をしていますので様々な着物に出会います。それぞれ原材料が違えば成分も違いますし、製作方法が違えばしみぬきのやり方も変わってきます。酸やアルカリなどの薬品も使いますから、その着物を見極める事がとても重要になってきます。

ですから、しみぬきの勉強だけではなく、製作工程の勉強も大切なんですね。知れば知るほどにどれも素晴らしくて大好きなんですが、知名度の高い代表的な物を一部ご紹介しましょう。

 

きもの検定2級取得者が二名在籍。さらに年1回復習のため、全員で練習問題100問をしています。

 

・ 三大友禅

京友禅(京都府)、加賀友禅(石川県)、東京友禅(東京都)

・  三大紬

結城紬(茨城県)、大島紬(鹿児島県)、牛首紬(石川県)

・  三大上布(麻)

越後上布(新潟県)、宮古上布(沖縄県)、近江上布(滋賀県)

・  三大御召

西陣御召(京都府)、塩沢御召(新潟県)、白鷹御召(山形県)

(*各三大〇〇については諸説あります)

・絞り染  有松鳴海絞(愛知県)、京鹿子絞(京都府)

・小紋染  江戸小紋(東京都)、京小紋(京都府)

・浴衣 長板中形(東京都)、注染(静岡県)

 

他にも、徳島の藍染め、新潟の小千谷縮、福岡の久留米絣や博多織などなど。沖縄も紅型や花織、芭蕉布など、どれも素敵で書ききれません。

 

特に大島紬は歴史はそれほど古くはありませんが、フランスのゴブラン織、イランのペルシャ絨毯と並んで「世界三大織物」に名を連ねている、日本が誇る優れものなんですよ。その繊細な染織方法はいつかブログでお伝えいたしますが、とても一回では伝えきれないくらい手間がかかっています。いつまでも継承されてほしいと願っています。

 

大島紬の原型。絣筵(かすりむしろ)。大島紬は二度織られます。

龍郷柄の一例

 

こうした様々な名産の染め物や織り物を、たくさんの方に知って頂くためにも、ブログで少しずつ紹介して行くつもりですので、楽しみにお待ち下さいね。

私達も学びを怠らず、より知識を深めて行きたいと思っています。