♢雨に濡れた時に今すぐ自宅でできるチェックと判断 ―着物生活―
前回は雨について、補正士の視点からお話致しました。しみぬきの仕事をしていると、なんでもあまり気にされない方と、すごく気にされる方とに分かれるなぁと、常日頃から実感しておりますが、こちらも補正士の観点から申しますと、どちらの方も同じようにチェックして頂きたい(笑)。時間をかける必要はありません。
雨に濡れたかも知れないと思いつつ、外出から帰って来たら、着物をまず着物ハンガーに吊るしますよね。すぐ畳んで仕舞うのは、濡れてなくてもあまり良くないのでやめて下さいね。湿気がこもってカビや汗変色の原因になります。(ブログ絹で作られている着物は湿気が大敵です)
どんなしみでも時間が経つととれにくくなりますから、着ていた方ご自身がチェック出来れば一番早いですね。まず吊るしてチェックしましょう。
❖ 撥水加工されている場合
撥水ガード加工をされてる場合は、されていない場合よりチェックが少いので先にお話致しましょう。撥水加工されていると雨に濡れても弾くので沁みていませんから、上からの雨は柔らかいタオルなどで押さえるように(こすらない)吸い取っておけば大丈夫です。でも泥ハネはありませんか?泥は微粒子の固体、いわゆる汚れが残っているかも知れません。軽い場合もあれば、前側や、腰の方まで広範囲に飛んでる事もありますし、内側の八掛についてる事もあるので、その辺りをチェックしましょう。
振り袖の場合は袖、特に下の方がよく汚れます。
また、濡れたために稀に他の物からの色移りがある事もありますから、それがないか衿元、袖口、脇、背などもチェック。ガード加工されていると色移りもとれる確率がアップします。
❖ 撥水加工されていない場合
① 水型をチェック
撥水加工されてるのとされていないのとで、決定的に違うのが、水型があるかないかです。雨によって、また着物によっても、跡のつき方が違います。
小さく点々と残るものや、少し縮んだように残るもの、くっきりと輪ジミになるもの。こういう水型を見つけたら、日が経つほどにとれにくくタイプもあるので早目にお手入れに出しましょう。こうした場合はその着物が水に弱い部分があると考えられるので、早目にお直ししないと残る事もあります。
少し大きく広がって滲むけど、干してるうちに乾いて無くなる水型、あるいはしばらく手で温めていると手の熱でフワーと消えるような水型は、そう心配しなくても良いと思います。しばらく干してよく乾燥させましょう。大島紬などの撚りのないシンプルな平織りの生地に多いですね。
○ 水型のつきやすい場所
肩山袖山、上前(特にひざから下)、後ろ側の腰から下、袖の前側(内袖)のたもと、袖の後ろ側(外袖)の全域。つまり帯下と下前以外ですね。手は前にあるので、袖の内側は濡れにくい、というわけです。
イラストを見て、全部やん!と思われる方もおられるでしょうが(笑)、軽い時は部分的に袖山が少し濡れただけ、というのもよくあります。雨がひどい時は全体に水型がある場合もあります。そんな時は縮みも心配ですから、お手入れに出して専門家にチェックしてもらって下さいね。
② 泥ハネをチェック
雨は上からだけではなく路上からもはね返ります。裾付近、多い時は腰近くや上前に飛んでいる事もありますし、振り袖の場合は長い袖の下の方が汚れています。見つけたらこすったりすると余計とれなくなるので(ブログ裾の黒ずみの正体は?★裾の黒ずみの正体は?(着物の汚れ_その1) -着物クリーニングー)、お手入れに出しましょう。
③ 色落ち、錆びなどのチェック
ちょっとレベルアップ(笑)。濡れたために色が泣いた(滲んだ)、又は鞄や帯など他の物から色が移った、金加工が心配、人混みで傘の錆びがついた。といったしみは、意外と見つけやすいのでついでにチェック。
④ その他のチェック
その他とは、着物以外のもの。羽織りなどの上着類、帯や足袋やショール、鞄。こちらも着物と同じようにチェックして、湿気はよく乾燥させて下さいね。足袋はご自宅で洗えるのもありますが、黒ずみはとれにくいものです。
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いかがでしたか?吊るしてよく見るだけ、時間はかかりません。但しこれは全て、軽い雨や普通の雨の場合です。最近はゲリラ豪雨などの大量の雨も降りますから、もしそんな被害に遭われたら、すぐに専門店にご相談下さいね。
何にせよ、転ばぬ先の杖。傘や雨コートを忍ばせておくのが一番です。撥水加工をしておくとより安心です。雨でも着物を楽しんでくださいね。
しるくらんどでは、撥水加工の他に、最新化学技術の力で空気中の有害物質から着物を守る「デオファクター・キモノ」もございます。ぜひご利用ください。