☆先染め(先練り)・後染め(後練り)とは[先染め・後染め_前編]ー着物雑学ー
このタイトルが何のことかお分かりになった方は着物についてよくご存知な方かもしれません。簡単に申しますと〝天然繊維の染色のために行う最初の工程″ということになるのでしょうか。一般にはあまり耳慣れない言葉ですが、染色の基本です。
「私の好みは先染め織物だったのか。」なんて発見もあるかも。
そして実はこの「先染めか後染めか」はしみぬきに大きく影響してくるんですよ。
少しお付き合い下さい。わかりやすくご説明いたしますね。
まず〝練(ね)り″からご説明しましょう。
練りとは、精練のことです。精練とは、絹の場合、繭や生糸に含まれるセリシンという粘着質のタンパク質を取り除き、中心にあるフィブロインという繊維質を取り出す作業工程のことです。この練りのやり方や分量で、セリシンをあまり取り除かないものと、綺麗に取り除いたものとでは風合いが変わっていきます。
これも絹!?と驚くくらい、様々な手触りの絹の生地があるのは、この練りの分量の違いも理由の一つといえるでしょう。
・先染め先練りとは…
生地を織り出す前に、生糸を精練して染めること。
生糸を精練してから様々な色に染め、その糸を使って柄を織り出したもの。つむぎなどのように、セリシンが残してある物あり、絹の自然な色味や風合いも楽しめる。御召、大島などのもそうで、丈夫な生地ともいえる。
・後染め後練りとは…
生地を織り出した後に、精錬して染めること。
生糸を使って織った生地を精練して、セリシンをよく落とし、漂白された白生地を、様々な色柄に染めたもの。縮緬、羽二重、絽などいわゆる柔らか物。礼装にも使われる。
使い分けるとしたら、強いて言えば、先染め着物は普段着に多く、後染め着物はよそ行きに多いと言えるかもしれません。これは、歴史的に先染めの紬のルーツは庶民の着物にあり、後染めの柔らか物のルーツは朝廷や貴族の着物にあるため、染め方や使う染料も違ってくるのでしょう。
格子や縞、絣といった、さりげなく且つ繊細で緻密な先染めの紬を、肩の力を抜いて普段のお出かけに楽しむ…いいですね〜 ^^
でもやっぱり、柔らかいドレープで美しい絵羽模様の華やかな後染めの訪問着で着飾って女性らしさを満喫する…これもいいですね〜 ^^
どちらも日本古来からの伝統技術が集約された、世界中の憧れです。
私たちも、どちらの着物も大好きですが
“染色補正士“として見る時、その視点は大きく変わります。
それについては、後編で詳しくお話いたしましょう。
(ブログ「先染め・後染めのしみぬき[先染め・後染め_後編]」に続きます。)
#先染め
#後染め
#精練