☆染料で染めていない黒「三度黒」とは?[三度黒_前編]ー着物雑学ー
黒い着物というと小紋や訪問着、振袖もありますが、やはり式服や留袖が思い浮かびます。
京都は〝京黒紋付染″という知事指定の伝統工芸品があるくらい黒染めも有名です。
しかし黒染めとひと口にいっても、様々な種類があります。
引き黒、煮黒(たきぐろ)、泥黒、草木染、深色黒など、黒の色の深みや色みもそれぞれ異なります。
その中でも今回は〝三度黒″ についてお話ししますね。
三度黒とは京都の高級黒染として有名です。
大きく分けると植物染めですが、単純な植物染めではありません。「植物媒染酸化染め」とでも呼びましょうか。(今私が作った造語です(笑))
つまり、染料は一度も使わず、植物の液と薬品を交互に生地に塗布(引く、といいます)して、化学反応で黒くしているのです。
一度目は、ログウッドという樹のエキスからできた液を引きます。
二度目は、ノアールナフトールというログウッドに様々な媒染剤を混ぜて作った液で引きます。(還元)
そして三度目は、重クロム酸を引いて酸化させ、黒みに発色させます。
重クロム酸って、劇薬です。六価クロムといえば聞いたこともおありでしょうか。
この重クロム酸の濃度で、赤みになったり深みになったりするようです。
ですが、濃すぎると生地が脆化します。
そして水洗するわけですが、この水洗がまた大変で当然そんな劇薬を洗った水を流しては環境によくありません。
大量の水を張ったいくつもの大きなプールを作り、浄化して流していたようです。
(私は染色の学校で教わったり、顧問の先生から聞いただけで、実際見たことはありませんが)
さらに最後は、蒸しをするのではなく、薄い膠(にかわ)を通して仕上げるというのも大きな特徴です。
ですから独特の手触りのものが多くあります。
植物染めの一種なので同じ黒は2つとしてなく、表題画像のような、色になっていきます。
年を経る度に自然な褪色が起きてより味わい深く、日本人の肌の色や黒い髪が映える、いい黒色になり、羊羹色といわれて好まれました。
少し赤みというか、錆びたような黒です。
式の時など、多くの女性が黒留を着るシーンが昔はよくありました。そこで、少し周りに差をつけられるところが、当時の女性たちのハートを掴んだようで、大変人気がありました。
黒染めは、どの技法も大変な技術と労力を伴いますが、三度黒は独特だということ。お分りいただけましたでしょうか。
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(続きはブログ〝黒留に変色が出ていたら貴重品かもしれません[三度黒_後編]″ でお楽しみください。)
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